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2010年1月23日 (土)

物音発生人種

物音発生人種ってのがいる。
物音発生人種がその耳触りな威力を発揮するのは主に「静かな空間」である。
 
静かな空間とは「静か」を要求されている空間のことである。
図書館、病院の待合室、映画館、試験会場などなど。
静かな空間は日常の様々な場所で遭遇する。
通常ならば、その空間の中では「音」を極力たてないよう努める、というのが生きてきた中で備わった素養というもの。
生きている人間、どんな物音もたてずに生活することはまず不可能であるが、静かな空間の中においてやはり気を使うものではないだろうか。
 
ある日、とある静かな空間において物音発生人種と一緒になった。
それが物音発生人種と解るのに時間はそう必要ない。
まず、足音がうるさいからである。
 
姿は見ていないが、彼はどうやら缶ジュースを買ってきたようでカプシュ!と勢いよくプルタブをあけた。
音からしておそらくスプライト系の炭酸飲料だと思われる。
よほど喉が乾いているのだとでも言いたいようにまず大きな一口で喉を鳴らす。
そしてビールのCMを喚起する「っあぁー」をごく自然に吐いてしまうのが物音発生人種である。
ここが「ぷはー」じゃないところが人間らしいが滑稽だ。
 
テーブルに缶を置くのも、「叩き付ける」といった具合でガツン。
チューの口元を連想させるジュルルーと液体をすする音。
飲み口の隙間に入り込むボーボーという荒い鼻息の音。
さらに口に含んだ液体でグジュグジュと口をゆすぎ、挙げ句グフッと咳き込み、ゲホゲホとむせ出す。
まったく、きぜわしない。とつい遠州弁で思ってしまう。
 
「缶ジュースを飲む人」というお題に擬音を添えるとしたら、たかだか「ゴクゴク」とか「グビグビ」ぐらいしか浮かばないが、この人種のそれはこうもあっさり人知を越えてしまうのである。
 
音の発生。それは行動の大きさ。
あらゆる行動が誇張されているということ。
そして、人目が気にならないという幸せ。
物音発生人種は今日もどこかで物音をたてていることだろう。
 
ガムをクチャクチャと噛む、ジャラジャラとしたチェーンをぶらさげる、首の骨を鈍く鳴らす、そんな彼らを見かけたら物音発生人種の疑いをかけること。
あ、あとドアはバタンと閉めないで。

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